1999 XML WWWページコンテスト
結果と講評

99’XML WWWページコンテスト選考委員会
村田真 / 檜山正幸 / 川俣晶 / 鈴木徹
1999年11月12日 (XMLフェスタ第2日目)

  99’XML WWWページコンテストには、15の作品をご応募いただきました。応募者の皆様、直接間接にご協力いただいた皆様、ありがとうございました。

結果

  選考委員会で審議し、下記のように入選作を決定いたしました。 XMLフェスタ の二日目(11月12日木曜日)に入選作を表彰いたしました。

総評

村田 真

  Internet Explorerが出てからわずかに半年あまりという時点で、これだけの作品が揃っているのは本当に素晴らしい。今回のコンテストへの応募者の努力が、国内でXMLを普及させるために大いに役立ったこと、技術の進歩に貢献したことは間違いない。コンテストを企画した我々の意図は完全に達成されたものと考える。

  このコンテストが成功したのは、日本XMLユーザーグループという場が存在し、そこにXML-designというメーリングリストが運営されていたという点が大きい。関係者の努力に感謝する。

  惜しくも入選しなかった作品について取り上げておく。XML暴走族の「ウェブ枕」は、デジタルテキストにあって始めて可能で表現という点で、特筆に価する。土佐日記は、応募後の更新のため選外となったが、そうでなければ間違いなく入選していただろう。Cocoonの国際化に貢献しているのもよい。asDocは実用的な力作。XML Quizは、XMLを作ったのが「W3C」だとしている点が惜しまれる(「ただの人」が正しい:-)。

  いっぽう、今回のコンテストには不満な点もある。多くの応募作品はXMLを単にデータの置き場として使っていた。つまり、ブラウザ上で動くスクリプトが主体であって、XMLデータは脇役である。この形態にもデータの再利用性という利点は確かにあるが、もっと斬新な利点を示してほしい。サーバ側で動作する作品もあったが、従来のCGIと比べたときの絶対的な優位性を示すには到らなかった。

  XMLは、構造化文書に関する長い技術蓄積の上に成立している。そこで見出されてきた利点をインターネットという新しい舞台で追求すれば、もっと新たな可能性が開けるように思う(なお、私が「日曜かてい教師おやじ」を強く押したのは、インターネット上でのinformation repurposingを提供しているからである)。

  また、インターネット上で動作するエージェントプログラムとXML文書・データによって、インターネット全体を一個のアプリケーションとするような可能性にも期待したい。頭がだんだん堅くなりつつある審査員を仰天させるような作品が、次回のコンテストに現われることを期待している。

  最後に、MIMEヘッダについて述べる。応募作品については、自作のJavaプログラムでMIME ヘッダを調べた。一つの目的は、期限後の改定がないことを確認するためである。もう一つの目的は、 content type とcharsetがどう設定されているかを見るためである。

  残念ながら、content typeとcharsetが正しく設定されていないページがほとんどだった。Content Typeがapplication/octet-streamになっていたり、 text/plainになっていれば、XMLで書かれているページだとブラウザには本来把握できないはずである。今後、XMLベースのフォーマットが増えるにしたがって混乱することが予想される。

  Content typeが正しく設定されていても、charsetパラメタが指定されていないものがきわめて多かった。正しく設定していたのは、土佐日記、リョーイン名古屋営業所、XML quiz、The Towerだけである。text/xmlを指定している場合は、charsetパラメタが省略されると、仕様上はUS-ASCIIと見なされる(SunのXMLパーサはそう動作する)。application/xmlを指定している場合は、XML宣言にあるencoding指定を見て判断される。

  なお、content typeとcharsetを正しく設定した上、negotiationまで行っている作品が一つだけあった。XML quizである。

  MIMEヘッダを正しく設定するには、プロバイダの協力が欠かせない。今回のコンテストを機会に、プロバイダがXMLを正しく認識し、早急に対応することを期待している。

  1. MIMEヘッダを調べる自作のJavaプログラム showHeader.zip
  2. 全作品についての調査結果

檜山 正幸

  入選作を決定するにあたって、我々は次のように考えた。一席は、XML WWWページの良きお手本となる作品、二席は傑出した特徴を持つ作品(多少の欠点は許す)、三席は色々な観点から。

  一席と二席については、今回の審査方針を採るかぎり、他の作品と置き換わった事態は考えにくい。総合的な水準の高さで小林さん(European Geografic)、圧倒的な技術力で浅海さん(SmartDoc)、XML技術の中心を捉えたコンセプトの中村・高橋・川村・大東さん(日曜かてい教師おやじ)となる。しかし、三席と選外の差はまったく微妙である。審査員それぞれのコダワリを色濃く反映している面がある -- これに対しては、客観的厳正な結果だったと主張する気はない。いわば、この結果は時の運、たまたま審査員の一人(以上)の価値観や好みにアピールした作品が入選しただけの話である。実際、選外の作品にも、光るものが多く見受けられた。選外の方々も自信を失わないで欲しいと思う。

  選外の一例として、「XML暴走族」に触れてみよう。この作品は、部分ごとに目指すところも完成度も異なり、統一性に欠けるきらいがあった。しかし、テーマを絞り整理してしまえば、制作者達が持っていた本来の意図(無軌道な楽しさの追求?)が消え、このページの良さ -- それはコンテストで良い成績をとる方向に働くとは限らない特質である -- もまた損なわれたのかも知れない。決して慰めで言うわけではないが、粗野と洗練が同居したこの姿は、入選を逸す結果とはなっても制作者達の意気込みや多様な個性を表現するにふさわしい形式だったのかも知れない。そしてまた、入選作品をいくつも出せるほどのアイディアと技術要素(の種)が発見できる。思いつくままに挙げれば: テキスト素材である文芸的作品にWeb的な表現を与えるという試み、漫才台本マークアップ言語開発、XML技術の展示会ページ、コラボレーションの支援環境など。

  ここで、今後コンテスト参加を目指す方々に、審査の評価を良くするノウハウをナイショで(ということにはならないが)お教えしよう。審査のためには、全ソースを見なくてはならなのだが、ブラウザのソース表示をたぐりながら、 URLを手作業で入力するのは楽ではない。関連するソースURLの一覧を付けておくと心証がよくなる。ソース表示を抑制する設定をしているものがあったが、これは印象を悪くする。また、説明文書は分かりやすく懇切に書くべきだ。説明が不十分だと、解釈(解読?)と評価に時間がかかる。もちろん、一般の方が参考にする場合でも良い文書があれば大いに助かる。

  今回の結果を見て、表現重視ページにはXMLが向かないとか、エンタテイメントものはコンテストで不利だ、とかの短絡的な結論を出すのはやめて欲しい。仮にほんとに「向かない」「不利だ」としても、それにチャレンジするのが意味のあることであり、より大きな結果を勝ち得ることにつながるはずだ。前もって「審査員が何を期待しているか」を知りたいという意見もあるが、たぶん、それは公表すべきではないだろう。審査する側は、実は予想もしてない作品の出現を期待しているのだ。審査員のごきげんを伺うような志の低い作品が評価されることはない。寝技だろうが反則ギリギリだろうがかまわないのだ(ホントの反則はいけないが)。「えっ? こんなのありなの?」と困惑、それでも「やっぱり認めざるを得ない」と審査員をうならせるような、そんな作品を見たい。 (今回、浅海さんのSmartDocはそのようなものだった。)

  XMLの地平線は見えていない。今後とも(限定としての)地平線は現れないかも知れない。つまりは、ほとんど無限の適用可能性を持っている。今回参加の方々、そしてその他の人々も、新しい応用分野、新しい手法、新しい表現の開発にャレンジしていただきたい。

川俣 晶

  全体を通しては、技術水準、目的、実現方法などのバリエーションが多く、単純に点数を付けて評価する方法は難しかった。そこで、一つの評価の価値観軸として、お手本や参考とするに値する作品に高い評価を下すという方針を取った。つまり、教育的に望ましい構成、デザイン、コーディングスタイルなどを持った作品に、より高い評価を下すということである。つまり、XML技術を一般ユーザーにアピールするというよりも、XMLに取り組もうとするコンテンツ開発者に、より望ましいお手本を示すということを重視した。この判断は、 XMLの普及は既に止められないほどの勢いがあり、1999年秋の今必要とされていることは、発展の方向性を正しい方向に導くことだと考えたことによる。1 席、2席の作品に関しては、文句無く、XMLコンテンツ開発者を志す者が徹底的に中身を味わう価値がある。3席の作品は、すべてに関して味わう価値があるとは言えないものの、一つ以上高い価値のある要素を含んでいるものだと考えている。

  全体的には、参加作品のどれもが、何らかのチャレンジを行っており、開拓者精神が旺盛であったことを高く評価したい。しかし、精神だけで作品作りはできないのもまた事実である。精神を実現するための表現力や技術力において、かなりのばらつきがあった印象は否めない。XMLを使用したというだけで評価される時代は既に終わっている。表現や技術に対する基礎的な素養を高めずに、世間をあっと言わせるXML応用はできないだろう。単にXMLが使えるというだけでは評価されず、世間に胸を張れる何かを持った上でXML「も」使えるという境地が必要であろう。結果的に、今回の1席、2席は、すべて、XMLとは直接関係のない得意分野とXMLとの組み合わせによって作られた作品である。

  私(川俣)にとって残念であったのは、真にXSLTを使いこなした作品が見あたらなかったことである。XSLTは、ただ単にタグを差し替えたり、スクリプト言語の入れ物になるだけのスケールの小さな言語ではない。強力なパターンマッチング能力や条件判断能力を持っており、XML文書に対する強力な加工能力を持っている。このXSLTの真のパワーを見せつけてくれる高度なXSLTスクリプトが見たかったというのが正直な感想である。

  選外になった作品に関しては、いくつかコメントがある。土佐日記には比較的高いポイントを付けていた。サーバーサイド技術を上手く活用しており、アクセスに特別なWebブラウザを強要しない、自動的な情報抽出などXMLの特徴を上手く利用している等、見るべき長所は多い。しかし、締め切り後の更新が多く、入選はさせないとの方針となったため、選外となった。これは作品そのものとは直接関係ない条件による落選であり、惜しいところがあると感じた。もう一つ、asDocは、ツールとしての価値は理解できるものの、XML関係者の間では一般的ではないPowerBuilderというソフトウェアの支援ツールであった点が、ネックになった。審査員の誰もPowerBuilderのユーザーではないため、適切な判断が下せなかった。審査員の能力不足と言われてもやむを得ないが、審査能力には限界があるので、特定業界特有の応用作品は入選しにくくなっているのが現状である。

  今後の展開に期待することは、もっと多様なXMLの利用方法の開拓である。 WebブラウザがXMLファイルを読み込んで、クライアントサイドのスクリプトで処理して表示するような使い方は、当初、それしか方法が無かったからそうしただけで、唯一の方法でもなければ、最善の方法でもない。特に、XML対応の Webブラウザでしか使用できない間口の狭さは、重大な問題と言える。これは、 Netscape NavigatorがXML対応すれば良いというような問題ではない。Webブラウザをバージョンアップしないユーザーもいるし、そもそも、Intenret ExplorerもNetscape Navigator使えない環境からアクセスするユーザーも多いのだ。それらを考えると、サーバーサイドでXMLからHTMLへ変換することも重要だが、オーサリング環境の中で、XMLからHTMLへの変換まで行ってしまい、変換結果のHTMLをWebサーバに置く方法も検討されるべきだろう。もちろん、これは、可能性の一例であり、他のあらゆる可能性がXMLに対して開かれている。

鈴木 徹

  今回は、応募者がデザイナーというより、プログラマ寄りの方が多いということもあり、正直言ってページデザインではレベルが低く、選に入った作品についても一般ユーザーから見てどこが素晴らしいのか理解しづらい、というのが実情だろう。

  見ためはさておき、XMLのデータ内容、記述、実装方法に着目すると、XMLコンテンツとしての可能性を秘めた作品が何点かあり、これはちょっといじっただけで凄いものができそうだ、との予感でワクワクさせられたり、大変楽しい審査であった。

  しかし、単にXMLのデータハンドリングの優位性ばかりに着目し、コンセプトからしてデータの再利用を目的としない、あるいは逆に、XMLだからデータ変更が簡単である、という理由でXMLを利用し、安易な実装を行った作品が多かったのが非常に残念である。

  たしかにスタイルも再利用可能となりうるものであり、それを継承してコンテンツを拡張していくのもXML応用の一つではあると思う。だが、問題はそのスタイルがほんとうに継承可能なものかどうか? という点にある。 XML文書が単にページ構成要素の一部を与える内部的パラメータであり、動きの定義についてはXML文書以外の scriptで定義してあったとする。すると、コンテンツの変更の際に更新されるのが、文章、イメージ等のみではたして良いのか? それで視聴者にあきがこないのか?という問題が立ち現れる。 複雑な動き、表現を実現しようとした場合、 XML以上に高度な表現力をもち、かつ作成が容易な既存技術は多く、視聴者、コンテンツ制作者双方において、はたしてXMLを選択することが最善なのか?という点を考えていただきたい。単にXML化しただけであって、従来技術でも可能であり、従来技術の方がむしろメリットが大きいと認められるようなものでは、作品の価値も評価も低い。なぜXMLである必要があるのか?という問いに答える作品であることが重要である。

  XMLのデータハンドリングの優位性、XSLの表現力ばかりにとらわれず、自分の制作したXMLデータ/XSLスタイルを、多くの人が資産として活用することが可能なXMLコンテンツづくりを目指して欲しい。 再利用価値のあるXMLが沢山できれば、それらの集合体によってまたすばらしいXMLコンテンツを生み出すことも可能になるのだから。

入選作品に対する講評


一席 : European Geografic

http://www.aurora.dti.ne.jp/~y-koba/contest/top.xml

  [主評者: 川俣]

  本作品の長所は、一つや二つではない。まさに一席たる必然性を持った作品である。

  特に、XMLの特徴をよく活用している点が素晴らしい。

  XMLをデータ記述に使用する場合、データとして書かれるべき内容と、それを処理するコードの中に書かれるべき内容をどう分けるのかが重要である。まず、この区分けが上手い。また、実際に記述されるデータの記述内容も良く吟味されており、レベルが高い。

  表現的にも、VMLによるベクターグラフィクスを用いて、自由に拡大縮小できる機能は、Webデザインの世界では斬新かつ実用性が高い。更に、ウィンドウサイズに応じて自動的にサイズを調整する機能などがあれば、もっと良かっただろう。

  本作品を応用、発展させる分野も容易に想像できる点も長所として数えられた。旅行案内システムなど、地理に関する情報を活用するWebページなら、このような技術をすぐにでも応用し、活用できるだろう。

  表面的には分かりにくいが、実際に記述されたXMLなどのソースコードの美しさも特筆すべきだ。バランス良く、適切に情報が記述されている。それは、ただ単に美醜の問題だけではなく、読み易さや、メンテナンスのし易さなどの点からも、望ましいものである。

  以上を総合して、本作品は、これからXMLコンテンツの作成を志すすべての者が、良きお手本に値する言えるだろう。

  [檜山]

  この作品の応用・発展として、ヨーロッパ地域の代わりにアジア地域を、などとは誰でもすぐに思いつく。しかしこのアイディアとシステムの汎用性はそのようなレベルではない。現在は国という区分に依拠した点もあるが、多少の手直しで、近畿地方の地図や××町二丁目の地図に応用してもよい。教育利用や、地方自治体の行政情報などにもすぐさま応用できるだろう。火星の地図やガリバーが訪問した小人の国の地図を表示してもよい。より広くいえば、2次元空間により象徴的/比喩的に表現可能なあらゆるものに適用できるのだ。例えば、人間集団に「区域」と「距離」を導入して、個人とグループのプロフィールをデータベース化するとか。


二席 : 日曜かてい教師おやじ

http://www.terra.dti.ne.jp/~peter/oyaji/sunday-oyaji.htm

  [主評者: 村田]

  二席の日曜かてい教師オヤジは私の一押し作品である。

  この作品は完成度が低く、説明も十分ではない。大きな欠点を挙げていくだけでも、片手では足りないだろう。しかし、それらの欠点を吹き飛ばすだけの長所をこの作品は備えている(どの選考委員もこの作品をきわめて高く評価していたのは私にとって心地よい驚きだった)。

  この作品は、Internet上でのinformation repurposingを実現している。 Information repurposingとは、ある用途のために作成・蓄積された文書情報を再構成し、別の用途に役立てることである。本作品におけるinformation repurposingは、複数の問題集からいくつか問題を選択して、配点付きの試験問題を生成する。実装は、IE 5.0の上でDOMとXSLを用いて行なわれている。

  Information repurposingは構造化文書の利点として大本命であり、このような作品がいくつも現われることを私は最初から期待していた。今後のXML の進むべき方向を示した作品として、ぜひ上位入賞させるべきと考えた。この作品が示した可能性を追求し、より完成度の高いXML WWWページが数多く作成されることを私は心待ちにしている。

  [檜山]

  実際のところ、今の子供達がこのシステムを喜々として使って勉強に精をだすとは思えない。もっと勉強を魅力的にする仕掛けが必要だろう。この点でもまだ未完成といえる。しかしそれにしても、この作品は楽しい夢を見させてくれる。子供の勉強に手を焼く日本中のおやじ達が、連帯して「分散かてい教師システム」を作り上げるという夢である。XMLは企業システムだけのものではない、日常の困った事に対し、コミュニティの力で対応する基盤を与える。ビジネスとは別な場、別な集団(この例なら、子供を持った親たち)に、XMLにより支援された連携、連帯、協力体制が生まれることだろう -- この予感に形を与えてくれた「日曜かてい教師おやじ」に私は感謝する。


二席 : SmartDoc

http://www.asahi-net.or.jp/~dp8t-asm/java/xmlcon/

  [主評者: 檜山]

  浅海さんのSmartDocは異色・異例の作品である。応募作品は、実はWebページではない。浅海さんが設計構築したソフトウェアがSmartDocなのである。ソフトウェアとしてのSmartDocは、単一のXMLソースから、HTMLやLaTeX、JavaHelp などの形式を出力するシステムである。Webページは、このソフトウェアにより生成された結果であり、同時にこのソフトウァアについて説明するページにもなっている。

  そもそも、これは応募作品として認めてよいのか? という問題がある。主催者・審査員が想定していたカテゴリーからは外れる。まったく予想外だったのだ。趣旨に合わないとして、審査対象外にすることも考えられなくはない。しかしともかくも、Webページの形態をしているもの(それが作品の本質的な部分であるかどうかはともかくとして)が存在するのは確か。これは検討せざるを得ない -- 見た、そして圧倒された。その技術水準の高さは驚くべきものである。そして、XMLの利用方法としても極めて正統的であり、これを審査対象外にすることは到底できないと悟った。

  ソフトウェアとしてのSmartDocは、古くから話題とされているワンソース・マルチユースの実現であるが、XMLとJavaを使った点が今日的である。先行する事例も十分に検討した上で設計がなされている。実用性は高く、評者も日常的に使ってみたい、と思った。

  WebページとしてのSmartDocは、SmartDocについて語る自己言及的な構造を持つ(このへんも心憎いのだが)。ソフトウェアのドキュメンテーションとしての完成度は高い。また、ページデザインの面でも優れており、ソフトウェアから切り離して単なるWebページとしてみても、ある程度の評価を得られるものである。

  SmartDocは、技術的にあまりに突出しているので、「XML技術利用ページの良きお手本」としての一席に選ぶわけにはいかない。しかし表記の通り、2席となった。作品の力でコンテストの枠組みやら趣旨やらの原則論をねじ伏せてしまったのである。SmartDocにおける「力」はXMLとJavaに関する理解の深さと技量だったのだが、今後、なんらかの「力」で他を圧倒する、あるいは審査基準や審査員の固定観念を粉砕するような作品の出現を期待する。SmartDocは、そんな破格の応募作品の前例となるだろう。


三席 : あめ湯

http://user.shikoku.ne.jp/kyss/ameyu/top.xml

  [主評者: 鈴木]

  本作品は、今回のコンテンスト中最もエンタテインメント性が強く、素材としているイラストの質も高い。 XMLを用いることによってデータとスタイル・プログラムの分離を行っているが、XMLデータの再利用性をついたものではなく、あくまで内部的パラメータ部分をXMLデータにして、コンテンツのメンテナンス性を高める為にXMLを利用してみようというアプローチが認められる。

  XMLを利用しているのだが、その利用目的をXMLのデータハンドリング時の優位性に限定し、それを強力なXSL、VBScriptを使ってごりごり動かしたらここまでできます、というXML応用法を提案する作品となっている。

  作者の目的とするXMLを使った楽しいページを作ろう、という目的は達せられてはいるのだが、私が本コンテストに期待していた、「なぜXMLが生まれてこなければならなかったか? 存在意義はどこにあるのか?」という問いへの答えを出してくれるものではなく、むしろXML関連技術を利用して、枝分かれ的に別の道へそれていく第一歩を踏み出してしまった作品であるように思える。

  作者が「機能概要と実装方式」で述べている、まずは一般ユーザーになんとかしてXMLに興味を持ってもらいたい、そしてその為に楽しいXMLコンテンツを作ってやろう、という志と努力は将来のXML普及・発展に貢献するものである。そして、「枝分かれ的な別の道」を極限まで追求したとき、それは太い本道になり得るかもしれない。今後とも頑張っていただきたい。


三席 : 国旗国歌法

http://www.d1.dion.ne.jp/~sago/top.xml

  [主評者: 村田 ]

  三席の国旗国歌法は、XLinkとXPointerに挑戦した点、法律のXML化の可能性を具体的に示した点を評価した。

  現時点でXLinkとPointerを実装したブラウザはHyBrickしかなく、その完成度はきわめて低い。それにも関らず、この作品はあえてXLinkとXPointerに挑戦している。XML文書のソースを見れば、XPointerとXLinkが約束する未来のハイパーテキストが想像できる。

  国旗国歌法は短い法律であり、リンク付けされた国会答弁もきわめて短い。しかし、より大規模な法律や国会答弁にも、本手法は適用可能だろう。


三席 : The TOWER

http://www.the-tower.to/

  [主評者: 川俣]

  The TOWERは、他の作品とは異なる多くの特徴を持っている。

  最大の特徴は、既に実用システムとして稼働中であり、他の技術を用いて構築された他の類似目的のサイトに引けを取らないシェアを持つに足る存在感を示していることである。他の応募作品の多くが、XMLの可能性を示すための技術デモンストレーションのレベルに留まっているのに対して、この点は一線を画している。

  また、Netscape Navigatorから逃げていないという点も特筆すべき特徴だ。多くの応募作が、Internet ExplorerしかXML対応していないからという理由で、利用可能Webブラウザを制限している。しかし、The TOWERに関しては、 JavaScriptベースのXMLパーサを用いたり、サーバサイド技術を導入することにより、Netscape Navigatorユーザーへのサービスも提供する努力を続けている。

  用途に応じた検索方法を複数提供している点も他に無い特徴だ。具体的には、サーバーサイドの検索、XMLによるデータベースをダウンロードして行うクライアントサイドの検索、ファイル一式を圧縮したアーカイブファイルをダウンロードしてローカルシステム上で行うスタンドアローン検索である。データ量が多いため、クライアントサイド検索は実用的とは言えない。しかし、利用方法にユーザーの選択の自由を提供していることは、注目すべき点と言える。

  これらの特徴がある半面、XMLベースのデータベース処理は効率が悪く、データ量が大幅に増えた場合、現行のシステムでは十分なレスポンスが得られない可能性が指摘されている。そういう意味で、The TOWERは、現在のシステムであり、将来の可能性を示すシステムではないと言える。

  しかし、あらゆる可能性を貪欲に試し、ユーザーに対して可能な限り良好な結果を与えようとする態度からは学ぶべきものがあるだろう。


三席 : Healing Square

http://www.asahi-net.or.jp/~eb7s-khr/healing/index.xml

  [主評者: 鈴木]

  この作品の全コンテンツのURLと機能概要の一覧には大変好感が持てる。この作品のように、自分の作品をあまさずしっかり見てもらおうとする努力・工夫は、多数の作品が並べられ審査されるコンテストという場では非常に重要である。

  各ページ毎に利用技術、動作、それぞれの工夫点を簡潔にわかりやすく述べている点も評価した。 審査員にとっても助かるが、なにより、応募作品を見てこれからXMLを勉強しようという人達にとってのメリットは大きい。

  また、多数ある各コンテンツにおいて、一つのパターンでの焼き直しではなく、それぞれが別のテーマを持って作り込まれている点、まさに作品名に含まれる、"Square"が構成されている点、作者達の努力を高く評価した。


三席 : MY EXOTIC FAMILIES

http://www.cnet-sc.ne.jp/ken-t/mypets/mypet.htm

  [主評者: 檜山]

  「MY EXOTIC FAMILIES」は、作者高木さんの飼っているペットの紹介である。マイクロソフトの初期のXSL(現在の仕様とはまったく違う)デモと似ている。スクリプトの一部もマイクロソフトのサンプルを利用している。その意味では、目新しいものはない。その一方、典型的なサンプルを下敷きにしているため、構造は分かりやすく、「XMLで何ができるか」を身近な素材で納得させてくれる。画像の品質も良く(爬虫類が嫌いでなければ)楽しめる。

  ページの構造の説明はまったく不十分だが、直接ソースを参照できるから、どのソースがどの機能を実現しているかを追うことができるだろう。既存の枠組みを流用するだけでなく、自分自身の工夫をもう少し入れて欲しかったという不満は残る。この作品を参照して新しいWebページを作る皆さんは、各自の工夫にチャレンジしていただきたい。


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